五輪を観にパリへ行きたい、いや行くんだ-。四肢や身長に影響を及ぼす「軟骨無形成症」を生まれつき患い、車いすで生活する城廻在住の前田詩生(しお)さん(9)が、自身の描いた絵でチーフを制作。パリまでの渡航費やチケット代を捻出しようと、周囲の協力を得ながら販売を開始した。

今夏のパリ五輪観戦を夢見る詩生さん。きっかけは、2021年に行われた東京オリンピック・パラリンピックの開会式をテレビで見たことだった。開会式では、代表選手が民族衣装を身にまとって参加する国々もある。その光景が印象的だった詩生さんは、毎日のようにその映像を見ながら絵を描き続けた。

「民族衣装を着たいろいろな国の選手を描いて、世界は大きいなと思いました」

文章につづった詩生さんは、さらに続ける。「フランスでのオリンピックに車いすで着物を着て行きたい」と。娘の意志の強さを知る母・可奈さん(43)は、「『行きたい』ではなく『行くんだ』と思ってますね」とうれしそうに話す。

小学3年生が抱いた夢に賛同したのが、詩生さんが2歳の頃から絵を教える菊池歩さん(53・二階堂在住)。昨年末から前田さん家族とチーフ制作を開始。絵をプリントした生地ロールを、ハンカチなどで使えるようにカットし縫合。100枚を用意し、3月1日から1枚3千円で販売中だ。

止まらない挑戦

難病を患った詩生さんは、左の手足が思うように動かなかったり、言葉が上手に発せなかったりするものの、数々の挑戦をしてきた。ピアノにサーフィン、車いすサッカー。自宅から1・2Kmの関谷小学校までも、電動車いすに乗り1人で通学する。友達とは、自作のカードでコミュニケーションをとっている。

開会式やパラリンピックの競技を観戦したいという詩生さん。菊池さんは「テレビを通じて世界や未来を見た詩生ちゃんを、応援していきたい」と話す。チーフ購入は【メール】ayuminkikurin999@gmail.comへ。